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Monday, February 19, 2007

ヴェネツィアの料理人

カルネヴァーレ期間中のヴェネツィアは、正に外に出るのも嫌になるぐらいの人出で、しかも、もともとが「無礼講」の謝肉祭ですから、泡やふにゃふにゃした軽い色粘度のようなものを噴射するスプレーを持ったイタリアの悪童たちが誰彼かまわずにそうしたものを吹きかける恐れもあるため、おちおち出歩けるような状態ではありませんでした。そんな中、私が非常に心を惹かれたのはホテルの近所にあった、シェフやホール・スタッフ専用の衣料品を売るお店で、あまりのカワイいセレクションに思わず着いた日に写真を撮った(昼休みで店は閉まっていた)のですが、後日、この白黒の上下とお揃いのスカーフなど一式を購入することになりました。お店の人はなんで私がこんなものを購入するのか・・・ちょっと怪訝そうでしたが、日本から来た料理人とでも思ったらしく、それ以上何も聞かずに売ってくれました。ただし、実際、そういう商売の方たちを顧客とする店らしく、クレジット・カードが使えずに現金払いで、他にも欲しいものがいろいろありましたが、それ以上は思い止まりました。

Saturday, February 17, 2007

ヴェネツィアの仮面舞踏会

カルナヴァーレの期間中、ヴェネツィアにパラッツォを所有する人たちが大規模な仮面舞踏会を開くというので、フランスのメディア・グループ社長夫妻所有の、とあるパラッツォで開かれたパーティーに行ってきました。街は、過去最高1400万人の人出といわれる狂乱状態で、特にリアルト橋からサンマルコ広場にかけては「生命の危険」を感じるほどの混雑ぶりとなっていました。日本でいったら明治神宮と川崎大師、それに鶴ケ岡八幡宮の初詣参拝客が5キロ四方に全部集まったような状態で、おびただしい数の警察官と地元ヴォランティアが警戒する中、十メートルを十分かけて進むといった感じでうんざりしました。まぁ、そんなこともあろうかと、ホテルはサンマルコ広場を避けてカナレッジオに、しかも直接、チャーターしたボートでチェック・イン可能な場所を探しました。公共交通機関であるヴァポレットも信用できないので、パーティー会場となるパラッツォまで徒歩圏のホテルを探したわけです。ボートでホテルの前に着いてみると、なんとゴンドラがランディングを塞いでいて、やむなく小さな橋を渡った反対側に上陸することになりましたが、まぁ、あの混雑の中をヴァポレット乗り場から荷物をひきずって歩いてくることを考えれば、はるかにマシだったと思います。

念のため日本から持参した自家製の仮面2点





























仮面舞踏会の話はいろいろあるのですが・・・結局、社長は現地で下記の仮面を新たに購入しました。この程度のものから、絹やヴェルヴェットをふんだんに使ったり、金属やラインストーンを配した手の混んだものまであって、価格もピンからキリまでといった感じでした。


夜会は9時スタートで、一階の中庭から入ってすぐのホールで楽士たちの演奏を聞きながらシャンパンやベリーニなどを飲んで一時間ほどを過ごし、招待客が全員揃ったところで上階に移動。いくつかの部屋にわかれて着席のディナーとなりました。おびただしい数のロウソクに火が灯され、テーブルや暖炉の上の花はもとより、燃えやすいものが多い屋敷内なので、スタッフがそこ、ここへと目を光らせながらのサーヴィスで、よく考えると怖いものがあります。このブロックには二つほど、かつてヴェネツィア共和国のドージェを務めた家柄の大きなパラッツォがあり、そのどちらもが期間中、大規模な夜会を夜ごと開いていました。ただし、まったく普通の閑静な住宅街で、薄暗い通りの外からではまったくわからない華やかなイヴェントが中では繰り広げられている現実が不思議でもあり、奇妙な感覚でした。

Friday, February 16, 2007

ドージェの館

ヴェネツィアでのホテル探しはいろいろと難しいのですが、今回は混雑が予想されることと、パーティー会場となるパラッツォまで船に乗らずに移動できる、しかも便利なロケーションという条件からサン・マルコ広場界隈を避けて慎重に選びました。かつてドージェの館だった建物をリノベーションした歴史建築物で、内装材に絹とダマスクがふんだんに使用されているため全館が禁煙になっていたことも良かったのですが、冷蔵庫があり、バスルームには深いバスタブもあって、館内に高速ワイヤレスLANが飛んでいることがヴェネツィアのホテルとしては画期的でした。木造建築でも静かで、部屋数もごくわずかなので、スタッフの目が行き届いて安心です。小さな、小さなホテルですが、清潔さと部屋の広さという点では、以前泊まった五つ星のダニエリをはるかにしのいでいたと思います。朝食は簡素ですが、自家製のケーキが二種類以上は出て、「部屋で朝食を取りたい」というと、銀のお盆にすべてのサーヴィスを載せてくれました。いちいちレセプションに依頼して、担当者が実行するという・・・極めてヨーロッパ的なサーヴィスのあり方が少しばかり面倒くさいような気がするかも知れませんが、少しだけチップを払うと、実に様々なことをやって貰えてクセになります。

Tuesday, February 13, 2007

ヴェネト州の温泉町:アバノ

2月13日から仕事でイタリアのヴェネト地方に出張しておりました。ちょうどヴェネツィアはカルネヴァーレの真っ最中だったのですが、まずは内陸側、パドヴァ近郊の温泉集積地、テルメ・エウガネーの温泉町、アバノの料理旅館に最初の三日ほど滞在しました。エウガネーはいくつもの温泉町を抱えており、日本でいうなれば熱海と伊豆を抱える静岡県といった感じの、典型的な保養地として古くからその名を知られています。ヴェネト州はイタリアでも北部で、スイス、オーストリアからの足場が良いため、ドイツ語圏の利用客が多く、エウガネーのホテルでは、イタリア語以外だとドイツ語が通じます。最近は英語のウェブ制作などに力を注いでいるようだったので、英語が通じるようになったのか・・・と感慨深く思っていましたが、実際に行ってみると、レセプションでようやく英語の話せる人が一人いる程度で、相変わらず、基本的にはイタリア語オンリーの世界でした。料理のメニューなどはイタリア語以外ありません。まぁ、そういう土地柄ではあるものの、リゾート地の面目を果たしているのは、こんなもの誰が着るのか・・・といった感じの、ものすごく高価で、胸の部分が総レースで丸透けの金色の水着などを売っているブティックがしっかりあるところで、要するに、お金持ちの中高年男性が、遊ぶ目的でモデルまがいの若い女性を連れてきて、こういうエッチなちっちゃい水着を買い与え、泳ぐ様を眺めたりして楽しむというわけです。女性たちはパフォーマンスに応じて、宝石などの貴金属やバッグ、靴なども買ってもらうらしく、そうしたブランド品を扱う店もびっしり揃っていました。中級クラスの温泉旅館には、年金暮らしの仲の良さそうな高齢カップルや、エステ・マニアの母娘連れが多く滞在していますが、妙に派手な五つ星のホテルには、年齢がかけ離れた中高年の男性と明らかに配偶者ではない、毛皮をまとった若い女性といったカップルも見られるわけです。それもまた、ヨーロッパの文化というか、若い女性が手っ取り早く高価なものを手に入れる手段なのでしょう。

Sunday, February 11, 2007

BankART 2/11/07 

Restaurant 1929
食と現代美術 Part3
レクチャー:Food for Art Vo.4
「創造性と食欲—五感の基本は味覚から」
 *本日のスペシャルはホットドッグです。
  特性チリソース、ザウワークラウトもありますよ!



今朝、煮え上がったばかりのチリ・コン・カルネをテラスで撮影。ピント・ビーンズ使用



アップにするとこんな感じ。踊ると・・・




*この画像は米Pillsbury社のDoughboyというキャラクターを「引用」しています。 

  http://www.pillsbury.com/


今日のキーワード: 右脳・左脳デュアルコア・プロセッサ、理系・文系・アート系、外部記憶装置キャッシュフラッシュ・メモリペタ

これらはITの文脈ではなく・・・古川さんの脳の構造と料理、食欲との関係を説明するメタファーとしてのキーワードです。

Saturday, February 10, 2007

「オトナ」のつくり方を考えた・・・

BankARTではどんな話をしようかと考えていたら・・・

今日の「題名のない音楽会」で東京芸大教授で、クラリネット奏者の村井祐児さんがこの3月に退官されるのを前に出演しておられ、「日本では音楽家は育たない」ということを訴えておられました。その際、村井さんのゲストとして、ジャズ・クラリネット奏者で横浜のBar Bar Bar常連の北村英治さんが出ておられました。トップ・ページに出ている新CDのタイトルは「クッキング」だそうです! 

村井さんが言っておられる「日本では音楽家は育たない」という意味は、日本の演奏家は「オトナになったら普通感じるはずの色々なこと」を経験せずに、テクニックだけ教えられてコンクールを渡り歩くから、いつまでたっても「子供の演奏」に留まってしまう・・・というご指摘でした。では、「オトナの演奏」をするにはどうしたら良いのか? その答えが現在77歳という、北村さんの「クッキング」にあるように思いました。

一方、今朝の日経新聞に「揺れる22歳の決断」と題して、働く意味を理解することなく社会へ出ていく有名大学卒のフリーター予備軍についての記事がありました。小学校から大学まで、寄り道しないことを前提で一直線に進学して、なんとなく「有名企業」を志向する日本の一般的な大学生について、「まだ若いのだから、途中で一年間ぐらい旅行するとか、ヴォランティアをするとか・・・」とイギリスの「ギャップ・イヤー」の制度などを紹介していたのですが、果たして「22歳」は若いのでしょうか?

村井教授が憂いておられることと、この日経の記事は、実は、根底でつながっているような気がします。もしかすると、「日本では音楽家は育たない」だけでなく、「ビジネスマンも育たない」のかも知れません。少なくても、「オトナになったら経験する」であろう多くのことを経験したり、考えたりする機会を与えられないまま大学まで来てしまった人たちに、コミュニケーション能力や想像する力、ましてや創造性といった生き抜くために必要な能力が十分に養われているとは思えないのです。

その「力=五感」を養うためには、料理をし、旅をして、それらを通じて友人をつくり、議論をして色々なことを考え、恋もして「オトナ」になれるのではないでしょうか?