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Friday, August 25, 2006

プラハの街と国立博物館

旧ソヴィエト連邦の崩壊にともない、東・中欧の国々は急激な民主化、市場化の波の中でもみくちゃになりました。おそらくその中でもチェコの激変ぶりは、近隣の国々と比較しても、比べ物にならないほどドラマティックなものだったのではないかと思います。端的に言って、観光地としてのプラハは2000年当時と比べて、ずいぶんと割高な街になりました。初めてプラハを訪れたのは、まだ1990年代のことだったので、その時はホテルも食事も買い物も、まるで天国でした。特に、文化度の高いこの国の古書のレヴェルは高く、十八世紀末の百科事典や植物図鑑の挿絵の版画を求めて街中かけずり回ったものでした。今では、もう滅多に手に入りませんが、かつて書物が貴重だった時代の挿絵として使われた珍しい魚類、美しい植物の手刷り版画が、テキスト部分とは切り離されて取引されており、これらを額装すると、立派な新築祝いのギフトにもなったのでした。ところが、十八世紀の面影を漂わせる町並みや建築、さらにはチェコの芸術家、職人たちの高度な技術に目をつけたハリウッドの制作会社が大挙してプラハに押し寄せ、歴史ものの撮影のみならず、様々な映画の舞台にこの街を選び、特に「ミッション・インポッシブル」の撮影に国立博物館が使用されてからというもの、ホテルのレートは年を追うごとに、倍々で上昇していきました。


「ミッション・インポッシブル」のロケが行われた国立博物館の大階段はすっかり有名になりましたが、実はここは美術館ではなく、自然・科学、歴史系の古くて地味なコレクションがあるだけなので、訪れる人たちはがっかりするかも知れません。かくいう私も拍子抜けしてしまいました。プラハにはかつて神聖ローマ帝国皇帝の優れた美術コレクションが鎮座していたのですが、それも遠い昔にスペインやウィーンへと持ち去られ、今では見る影もない状況です。むしろ、プラハの街で目を奪われるのは、ここに残された建築物の壮麗さかも知れません。

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