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Sunday, December 10, 2006

エスコリアルの離宮にて

マドリッド郊外、エル・エスコリアルを訪れたのは2005年の2月末で、中庭には数日前の雪が残っていて、子供たちが雪合戦に興じてました。小高い山の頂きに位置するエスコリアルにはスペイン王家の墓所があり、つくりとしては、要塞、兼、墓所という、来る者を拒む厳しさが感じられます。礼拝堂の他には、高貴な人にだけ使用が許された壮麗な図書閲覧室があり、いかにも閉じられた祈りと研鑽の場といった風情をかもし出しています。


私は以前、宮廷画家のヴェラスケスについての著作を出版して以来、ずっとエスコリアルへ行きたいと思っていました。ヴェラスケスが憧れたというティツィアーノの絵画がそこにあるからです。また、よくはわかりませんが、もともと私は十七〜八世紀のバロック・ライブラリー全般に強く惹かれるものがあり、特にプラハのストラホフ修道院と、このエスコリアルの図書室には不思議な既視感を覚え、また、時々夢の中で黒い馬に乗って、大きな太刀を下げ、黒い僧服をまとって荒涼とした土地を疾駆しているらしい自分の足が見えるので、もしかすると、その頃に僧兵として、合戦に参加していたのかも知れません。基本的にはカトリック圏の、かつて僧院として使われていた学術研究機関の建物に足を踏み入れるとなぜかホッとして懐かしさを感じ、装飾を排した要塞建築の厳しさに好もしさを覚え、高価な書籍が天井までぎっしり詰まった書架を見上げて微笑し、一方で、あちこちに飾られた華美な美術品にも惹かれるという、ちょっと倒錯的な雰囲気が私自身にもあります。地理的に離れたプラハとマドリッドですが、いずれもハプスブルク家ゆかりの地で、戦乱の多い時代のことですから、その双方を前世で見ていたとしても不思議はないかも知れません。もともと日本の刀のように片側にだけある剣には馴染みを感じず、幅が広く、両側が刃になっていて、両手で持って振り回すタイプのものを博物館で見ると親近感が湧く・・・というか、これこそが剣だという気分になるので、たぶん、そのあたりで合戦していたのでしょう。まぁ、ロクなことはしていなかったものと思われます。

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